Saturday 23 September 2006

ピタゴラスの定理



数学シリーズ...

昔、fj で延々議論したことがある。そもそも、

 ピタゴラスの定理って定理なのか?

まぁ、簡単に言えば「正しい言明、つまり、証明できるもの(あるいは公理)なのか?」ってこと。これは、実は簡単にわかる。証明できません。だって、反例があるんだもの。非ユークリッド幾何学という...

 dz^2 > dx^2 + dy^2

となる幾何学があるわけさ。だからピタゴラスの定理ってのは、どっちかって言うと、「必要に応じてする仮定」あるいは「理論の前提」なわけだ。

じゃぁ、なんで、世の中には「ピタゴラスの定理の証明」なるものがたくさんあるのか? つまり、ユークリッド幾何学を特徴づける、dz^2 = dx^2 + dy^2 よりも基本的な命題があるかってことだよね。

一般的には、第五公準(平行線は唯一唯一つ)ってのがそうだと言われてます。でも、そもそも直線ってなんだ? もしかして、二点の最短距離とか言う? じゃぁ、三角形の形と長さを保存する回転の存在は? そうすれば、良く知られている図での証明が出来る。要は、何か他の定理とか公理に押しつければ良い。回転とか平行線とかがそれに当たるわけ。

僕が好きな証明は、こんな奴。
 l = sin θ * sin θ + cos θ * con θ
をθで微分すると...
 2 sin θ * cos θ - 2 cos θ * sin θ = 0
で、定数だってことがわかって、これ(と境界条件)から、dz^2 = dx^2 + dy^2とするって奴。

この方法は、実は、無限小回転(つまり三角函数の微分の仕方)を
 0 -1
 1 0
という行列だと仮定することと同じ。なので、回転に対する公理をうまく構築すれば、ピタゴラスの定理を証明することは可能です。

なんだが、そのあたりで結構異論がでた。なんでなのかは良くわからない。そもそも何を議論していたんだろう? 割と当り前なことを書いていたはずなんだが... 他の人に「河野さんは何んであんなにがんばっているの?」とか言われて通じてないことに気が付いたってなところ。

sin θ, cons θを、無限級数の和として定義してやって、それを使ってユークリッド回転を定義するなんて言うのを提案していた人もいますが、定義の必然性に乏しいのが欠点だな。もちろん、図を書いて、その無限和が、円弧の形に近いというのを示すことは出来るんだけど... それは、三角形の回転で証明するのに後退している気がする。島内先生の「数学の基礎」はそんな方法だったと思って探したんだけど、どうも違うみたい。

とかなんとか考えると、やっぱり、ユークリッド幾何ってのはダメで、多様体上の計量を定義する関数を与えるっていう解析幾何的手法が良いことがわかります。そうすれば、「ピタゴラスの定理、あるいは、ユークリッド幾何は、特定の計量を持つ幾何」だってことで終るので。(つまらん...)

ちなみに、
 dz^2 = dx^2 - dy^2
とかするのが、相対論(ミンコフスキー幾何)なので、相対論の理論的正しさってのは、ユークリッド幾何の理論的正しさと、ほとんど同じだってこともわかります。なので、「相対論が間違っている(内部矛盾がある)」ってのが間違いだってのが簡単にわかります。円の代わりに双曲線を使うわけだね。

No comments: